俵万智と水原紫苑
「この味いいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
昭和62年5月に発売された俵万智(昭和37年生)の歌集「サラダ記念日」は、このような口語体を交えた新鮮な言語感覚がブームとなり、年末までに250万部が売れた。飾り気のない日常感覚のなかで失恋や不倫をも明るくうたいあげる。
焼肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き
水密桃の汁吸うごとく愛されて前世も我は女と思う
眠りつつ髪をまさぐる指やさし夢の中でも私を抱くの
チューリップの花咲くような明るさであなた私を拉致せよ二月
* * * * * * *
現代女流歌人として注目されているのが水原紫苑(昭和34年生)。端正な文語文体によって、見えないものを鋭い感受性でとらえている。
菜の花の黄溢れたりゆふぐれの素焼きの壷に処女のからだに
まつぶさに眺めてかなし月こそは全き裸身と思ひいたりぬ
ふり向けば椿は未だ咲きてをり純潔といふ奇蹟を信ず
死のうすき舌を感ずるそびらさへ与へけしな椿のごとく
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