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2008年1月26日 (土)

暗窖の裡

    夏目漱石の「それから」に「つい、うとうとする間に、すべての外の意識は、まったく暗窖の裡に降下した」とある。「窖」(こう)とは、深いという意味。「裡」(うち)は「裏」の異体字。「暗窖(あんこう)の裡」とは、暗く深い穴の中、深い穴のような暗部、という意味である。

    「暗窖」を買ったばかりの「広辞苑」で探す。出ていない。明治の新聞小説では使われた言葉である。少し教養ある読者であればみんな読めたであろう。だがケペルも「暗窖」を「あんこう」と読めずに「あんこく」と読んでいた。「あんこく」は誤読である。日常生活にはほとんどみかけない熟語だが、漢字検定には出題されるかもしれない。なぜ「広辞苑」に収録されないのは理由は判然としない。ためしに手元にある外の辞書を引いてみた。簡単に見つかった。「国語大辞典」(小学館)に「暗窖(あんこう)暗い穴ぐら」とある。金田一春彦はエライ!。否、載っているのが当たり前であろう。思えば、ケペルが小学生時代に使ったのは、金田一京助の「学習国語辞典」だった。赤い本であった。「百字帳」を書くためボロボロになるまで使った。

   念のためもう一度、「広辞苑」を調べたが無かった。別冊付録の「漢字・難読語一覧」を見たがやはりなかった。大枚7千875円を使ったが、ケペルは「暗窖の裡」に落ちた。新村出は悪くない。ただディアドコイ(後継者)に恵まれなかっただけだ。(ちなみにディアドコイも広辞苑にのっていない。ギリシア語はのせないのだろうか)ケペルの広辞苑神話はガラガラとくずれた。むかし志賀直哉が広辞苑の宣伝文を書いていた。あまり宣伝などしない誠実な人なので効果は絶大だった。志賀は戦前は改造だったが、戦後は岩波書店に乗り換えた。ただそれだけなのだ。三省堂でも小学館でもいい国語辞典を出している。植木等やハナ肇を国語辞典で引けるのはお遊びにはよいが基本語がないのは困る。いかりや長介は収録されていない。これは「シャボン玉ホリデー」で育った世代が編集に携わったためであり、もう数年して「8時だョ!全員集合」で育った世代が編集委員になれば、いかりや長介の広辞苑殿堂入りもあるかもしれない。ほんとうに日本の国語辞典はこれでいいのだろうか。「広辞苑」は固有名詞やカタカナ語を増やしてこれからもますます変な辞典になっていくであろうが、国語辞典としての基本的な部分を検証していくことが必要であろう。

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