運命の赤い糸
将来結ばれる男と女は、互いの小指と小指が赤い糸で結ばれているというのは、何時頃から言われたのだろう。流行歌で確認できるところでは、1987年の南野陽子の「秋のIndication」のB面「ひとつ前の赤い糸」の歌詞に「彼ならひとつ前の赤い糸よ」「ときどきもつれてもね ふたりの糸 ひきちぎらないで」(小倉めぐみ作詞)というのがある。もちろんもっと古くさかのぼれるだろう。起源は、なんと中国の唐の時代に「赤縄」(せきじょう)という語があったという。
韋固(いこ)という青年が結婚の相手を捜していると、月の光で読書をしている老人に出会った。この老人は赤い縄の入った袋を持っている。韋固は何のために持っているのかと聞いた。すると老人は「この赤い縄は夫婦となる人の足をつなぐもので、結び合わせれば契りは不変となる」と答えた。韋固は老人に連れられて市場にきた。一人の片目の老婆が三歳ほどの女の子を抱いている。見るからに汚くて醜い子である。老人はその子を指して言った。「あれがお前さんの女房だ」韋固は思わず怒りが込み上げてきた。「殺してもいいですか」「あの娘には富貴の運がある。一緒になれば幸せになれる」言い終わると老人はいなくなった。韋固は召使に女の子を殺すように命じた。だが召使は「心臓をめがけて突き刺したが、外れて、眉間に刺さり、逃げてきました」と答えた。
その後、韋固はなかなか縁談がまとまらなかった。しかし14年後、とても美しい17歳の娘との縁談がまとまった。だがその娘の額には傷がある。娘は、貧しくて伯母さんに育てられたという。韋固は「伯母さんは片方の目が見えないのではないでか」とたずねた。娘は驚いて「どうして御存知ですの」韋固は「お前を刺した者はわしがよこしたものだ。なんと不思議なことだ」韋固はそう言うと、妻にことのすべてを話した。このときより、夫婦はますます互いを敬い愛するようになった。
(この話は「定婚店」という唐代の伝奇小説で「太平広記」「続幽怪録」に見える。)
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