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2007年10月20日 (土)

福田内閣と韓信の故事

  「背水の陣」内閣の福田康夫は10月19日、国立公文書館で開催中の秋の特別展「漢籍」を見学した。そこで展示されていた漢籍を見て「私の心境はまさに韓信の股くぐりだ」と言ったという。その真意は現在、政府が国会に提出しているテロ対策特措法案成立への決意ともみえる。

  ところで福田首相は何かと韓信の故事をひくが、ほんとうに韓信の最期を知っているのだろうか。「国士無双」といわれた韓信も漢帝国成立後は「狡兎死して良狗煮られ、高鳥尽きて良弓しまわれ、敵国破れて謀臣滅ぶ」といって准陰候に下げられた。そして5年後、斬殺されその三族まで族滅された。

   はたして福田首相は何という漢籍を見たのであろうか。「股くぐり」の故事が載っている漢籍といえば、やはり司馬遷の「史記 准陰候列伝」が考えられる。しかしその論賛で司馬遷は次のように語っている。

   「もしも韓信が道を学んで謙虚に、自分の功を誇ることなく、才能に慢心することがなかったら、漢朝に対する勲功は、周における周公、召公、太公望らにも比べられ、後世、子々孫々の祭祀を享けられただろう。こうした道をつとめず、天下が平定された時に叛逆をはかったとあれば、宗族を滅ぼしたのも、また当然ではなかろうか。」

    「韓信の股くぐり」は江戸時代以来、日本でも人気のある故事成語ではあるが、「背水の陣」「狡兎死して走狗煮らる」などあまり一国を担うリーダーの使用する故事ではない。おそらく側近の浅知恵であろうが、歴史認識の甘さが気がかりである。

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