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2007年10月20日 (土)

秋の詩、三編

   秋の日

       ライナー・マリーア・リルケ詩

       藤原定訳

主よ、すでに秋です

夏はじつに偉大でした

日時計の上に

あなたのかげをおいてください

そして野に 風を放ってください

果樹にのこっている木の実が

よくみのるよう命じてください

その木の実らになお

あたたかい南風の二日を

おあたえください

その木の実らが十分に熟して

あまやかさがやがて

よいぶどう酒に醸されますよう

秋です。

いま家なき者はもはや

家を建てることができません

いま孤独なひとは

ずっと孤独のままで

夜もねむらず

本を読み

長い手紙を書き

並木道を 心おちつかず

あちこちとさまようでしょう

木の葉ちるなかで

                 *

     枯葉

        ジャック・プレヴェール作詞

        ジョセフ・コスマ作曲

        岩谷時子訳詩

あれは遠い思い出

やがて消えるほかげも

窓辺あかく輝き

光みちたあの頃

時はさりて静かに

降りつむ落ち葉よ

夢に夢をかさねて

ひとり生きる悲しさ

こがらし吹きすさび

時はかえらず

心に唄うは

ああシャンソン 恋の歌

暮れゆく秋の日よ

銀色の枯れ葉散る

つかのま燃えたつ

恋に似た落ち葉よ

いつの日か抱かれて

誓いし言葉よ

はかなくただ散りゆく

色あせし落ち葉

          *

  落葉(らくよう)

       ヴェルレーヌ詩

       上田敏訳

秋の日の

ビオロンの

ためいきの

身にしみて

ひたぶるに

うら悲し。

鐘のおとに

胸ふたぎ

色かえて

涙ぐむ

過ぎし日の

おもいでや。

げにわれは

うらぶれて

ここかしこ

さだめなく

とび散ろう

落葉かな。

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コメント

落葉(らくよう)  ヴェルレーヌ詩
昔似非文学少女だった私が学生時代に暗証していたうろ覚えの箇所をたよりにここまでたどり着きました。

 やっぱり学生時代に傾倒した詩だったとここでしっかりと再確認して安心しました。

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