パンティーの力
女性の下着の歴史は、シュメールに始まる。ルーブル博物館に所蔵するシュメールのテラコッタ像に描かれた二人の婦人のうち一方がはいているパンティが世界最古のものという(紀元前3000年)。
中世ヨーロッパ、男性下着ロインクロスが発達して、16世紀イタリアで女性用ズロースが生まれた。
日本では近代になっても女性は和服のままで、下着は長襦袢、腰巻。ショーツ(当時はズロースといった)の使用は昭和初期になってもほとんどなかった。
ところが昭和7年12月16日、新装なったばかりの東京・日本橋の白木屋デパートの4階玩具売り場のクリスマス・ツリーの電飾から出火。14人が死亡した。「当時の女性はズロースをはいていなかったため、裾の乱れを気にして犠牲者を増やした」という俗説がまことしやかに語られたが、白木屋火災の後に急速にズロースの着用が増えたという事実はない。一般に日本女性がズロースを着けるようになるのは戦後からである。戦後日本女性の意識や行動様式が大きく変化したのはズロースを着用するようになったことが一つの要因であろうが、残念ながら「パンティーの力」を学問的に解明された研究は少ない。
パンティーという語は昭和31年に発売されたウィークリー・パンティが起源である。しかしパンティーという語には恥じらいがあるためか、ショーツという語を使うこともある。衣食住という言葉があるが、衣服は人類にとって必要不可欠なものであり、羞恥心を超越して下着の歴史についても研究すべきと考えている。
ところが今日の新聞でこんな記事を読んだ。ミャンマー軍事政権による民主化デモ弾圧に抗議して、世界各地の女性が最寄の大使館にパンティーを送りつける行動が起こっているという。なんでも軍事政権の指導者は男性ばかりで残忍なだけでなく、迷信深く、女性の下着に触れると男性の力を奪われると信じているからだそうだ。女性の下着には世界を変えるパワーがあるようだ。
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