赤まんま
紅葉にはまだ早い初秋の頃、山野に薄紅色の花穂をゆらす赤まんま。赤飯のまんまとも呼ばれ、古よりずっと、秋の野に彩りを添えてきた。その温かさ、素朴さは文人たちも心動かされ、その思いを俳句や短歌にしている。
露草や赤のまんまもなつかしき(泉鏡花)
此辺の道はよく知り赤のまま(高浜虚子)
赤のまま墓累々と焼け残り(三橋鷹女)
立どまりあたり見廻しぬ紅に咲き満ちたるは犬蓼の花(斉藤茂吉)
赤まんまはタデ科タデ属の一年草で、和名はイヌタデ(犬蓼)。俗称の赤まんまは、ままごと遊びに由来するといわれる。子どもたちは、紅花を赤飯に見立てて遊んだ。「イヌ」がつくのは、辛みに欠けるため食用にもならず、役に立たないためである。同じタデ科の植物でも、独自の辛みで刺身のつまや香辛料、漬物に用いられるのはヤナギダデである。「蓼食う虫も好き好き」という諺は、「辛いタデを食べる虫があるように、人の好みはさまざまなもので、ひとくちにはいえないもの」という意味だが、ヤナギタデのこととされている。タデと酢とを合わせたタデ酢がどんな魚にも合うと室町時代の料理書に書かれており、江戸時代に醤油が登場するまでは、魚料理の調味料として重宝された。現在でも鮎の塩焼きにタデ酢が添えられる。(参考:「赤まんまと秋の山野草」講談社)
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