無頓着な王安石
王安石は勉強に熱心であったが、風呂が嫌いで、服を着換えるのもめんどくさがった。いつも垢のこびりついた服を洗濯させずにいつまでも平気で身に着けていた。
食べ物でもそうだった。ある人から王安石は鹿の干し肉を好むと聞かされ、夫人はけげんに思った。というのも、夫から食べ物の好みなど聞いたことがなかったからである。この人には味覚というものがないのではないか、とさえ思うことがあった。夫人はそこで、なにゆえ鹿の干し肉が好物だと分かったの、と尋ねたところ、王安石のそばづきの者が答えた。
「お食事のたびに他の物には目もくれず、鹿の干し肉だけを召し上がられるからです」
夫人が、食事のとき干し肉はどこにあるか訊いてみると、箸とスプーンの近くにありました、という答え、そこで夫人が言った。
「明日、他の物を箸とスプーンの近くに置いてごらん」
はたして、くだんの好物は食べ残された。つまり、王安石は鹿の干し肉が好きだったのではなく、近いところにあったから食べたのだった。
王安石(1021-1086)は北宋の神宗のときの宰相。「王安石の新法」つまり均輸、青苗、市易、募役、方田均税、保甲、保馬法などの革新政策を断行した。(三浦國雄「王安石」集英社)
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