伊勢物語、東下り
「伊勢物語」のなかでも、「東下り」の段はもっとも知られている。二条の后がまだ東宮妃になる以前、在原業平はこの人の許にひそかに通っていた。東宮に差し出すつもりでいた兄弟たちが女を盗み出すがすぐに奪い返され、ついに都に居たたまれなくなって京を捨ててはるばる東に下り、さらに奥州の方までさまよい歩く。
東下りの段には、有名な歌がある。一つは三河国八橋で詠んだ歌。
から衣 きつつなれにしつましあれば
はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ
(唐衣は着ているとなれる。私にはそのなれ親しんできた愛しい妻が京にいるので、はるばるやってきた旅をしみじみ物悲しく思うのだよ)
この歌が「かきつばた」の五文字を詠みこんだ「折句」の歌。
二つ目は隅田川のほとりで詠んだ歌。
名にしおば いざ言問はむ みやこどり
わが思ふ人は ありやなしやと
(「みやこ」という名を持っているなら、みやこ鳥よ、さあおまえにたずねよう。私の愛する人はすこやかに暮らしているかどうかと)
現在「言問橋」の地名を残す。台東区花川戸と墨田区向島の間で「水戸街道」(言問通り)が隅田川を渡る「言問橋」である。
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