私の初恋が、また私を呼び止めたらどうしょう
全20話の「冬のソナタ」、第14話「二度目の事故」で交通事故で記憶を失ったチュンサン(ぺ・ヨンジュン)が再び交通事故で記憶を取り戻す。現実にはありえない設定ではあるが、ドラマ全体の中では第12、13、14話はとても重要な場面が続く。第12話「10年前の真実」で、自分がチュンサンであることを知ったミニョンがユジン(チェ・ジウ)に事実を告白する。
……僕は……チュンサン、です。
第13話「追憶」では、ユジンは春川の高校の放送部を訪ねて、「初恋」の詩を聞き思い出に涙する。「そよ風が燕を包み、天空を運ぶように、陽が照りつけても、雨風が吹きつけても彼方遠くまで二人が飛んでいけるようにしてください。でも、私の初恋が、また私を呼び止めたら、どうしょう?」
ちょうどその頃、ミニョンも講堂のピアノの前にいた。そして記憶の戻らない自分に決別するかのように、ついにアメリカ行きを決意する。
第14話で、深く激しい傷心を抱えたミニョンは空港へ行く。何も知らずにポラリスに出社したユジンは、ミニョンが置いていった封筒を渡される。そこには「初めて」のCDとメッセージが書いてある。
ユジンさん。僕はいまごろ飛行機の中にいるはずです。このプレゼントはユジンさんにとって負担になるかも知れないけれど、でもどうしても黙って行くわけにはいかなかったんですよ。チュンサンのようにテープに録音してあげることはできなかったけれど、それでもプレゼントしたかった。お幸せに。
チュンサンがテープをくれた話は誰にもしたことがなかった。チュンサンしか知りえない事実が書いてあったのだ。ついにミニョンがチュンサンであることを知ったユジンは慌てて空港へと向かう。もはやミニョンではなく、チュンサン!とその名を呼んで。
名セリフが多数あるが、なかでも第12話で、ユジンが友人のチンスクに心のうちを話す場面での会話。
ユジン「サンヒョクがね…」
チンスク「うん」
ユジン「サンヒョクが訊いてきたっけ…。イ・ミニョンさんのどこがよかったのかって…」
チンスク「そう、それでなんて言ったの?」
ユジン「答えられなかった。それは言葉ではとても説明できない…」
チンスク「ユジン…」
ユジン「チュンサンを見ていると、すとんと落ちていくような感じがしたの。そんな感じがしたのよ。わたしの心が…どきどきする胸がすべてチュンサンに向かっていく感じ…ああ、これが愛なんだなあ…これが運命だなあって…思ったの。チュンサンが死んでからそんなふうに感じることはもうないと思ってたけど…イ・ミニョンさんに出会って、ある瞬間、すとんって…そうだったの。顔が似ているからじゃなく…そうじゃなくて…理性とは関係なく…胸がときめく感じ…チュンサンといるときみたいにすごく胸がどきどきする感じ…ミニョンさんが感じさせてくれたの…どうしてそんなことができたのかしら?…ミニョンさんとチュンサンはまったく別人なのに…わたしの心が二人を一つに結びつけちゃったの…おかしな話かも知れないけど、わたしの心の中ではチュンサンはミニョンさんと同じ人のようだった…」
韓国では、詩集がベストセラーのランキングに何冊も入るほどよく売れる。日本では現代詩を読む人を探すほうが難しくなったが、韓国の若者たちは現代的な恋愛詩をよく読んでいる。それだけ言葉に敏感であり、自分の恋愛観や人生観を美しい言葉で語ることには慣れている。この場面でも、婚約者のいるユジンが親友に、他の男性への思いを打ち明けるなど日本ではなかなか無いように思える。「冬のソナタ」の主人公はユジンであり、初恋の心の痛みをずっと持ち続けた女性であり、多くの女性がユジンの心の変化に感情移入できたのも、この場面のセリフに集約されているような気がしている。
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