千の風になって
今日、テレビの「ミュージック・フェア」と「家族で選ぶにっぽんの歌」で秋川雅史の「千の風になって」を聞いた。「私のお墓の前で泣かないでください そこに私はいません 眠ってなんかいません」死者の側から、嘆き悲しむ遺族に慰めの言葉が語りかけられる。ケペルも亡くなった父、母を思い出した。「秋には光になって 畑にふりそそぐ 冬にはダイヤのように きらめく星になる 朝は鳥になってあなたを目覚めさせる 夜は星になってあなたを見守る」言葉の一つ一つがじわじわと胸に伝わってくる。そして秋川雅史の張りのある歌声が、多くの人たちに共感をよんでいる。クラシック歌手でチャート1位というのはオリコン史上初の快挙だそうだ。
もっとも戦前までは歌謡界もクラシック系の歌手が主流であった。東海林太郎(1898-1972)は昭和8年音楽コンクールでオペラのアリアをうたい入賞している。藤山一郎(1911-1993 )は増永丈夫という本名でクラシックを歌っていた時期もあった。藤原義江(1898-1976)、田谷力三(1899-1988)、徳山璉、柴田睦陸(1913-1988)たちは日本歌曲の普及に大いに貢献した。これまで紅白歌合戦といえば演歌歌手が中心という印象がある。テノール出場歌手といえば、藤原義江、柴田睦陸、立川澄人、 錦織健くらいであまり印象はなかった。昨年の第57回NHK紅白歌合戦で初めて聞いたが、秋川雅史の「千の風になって」は心に残ったいい歌唱だった。クラシックが日本の歌謡に興隆した昭和という時期と戦時体制とが重なったため、多くのクラシック系の歌手たちは国民歌謡や戦時軍歌を歌わされた不幸な時代だったと思う。いまこそクラシック界はその純粋なる音楽性と芸術性で新しい日本歌曲の普及に貢献してもらいたい。
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