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2007年2月10日 (土)

「春のワルツ」と「スーホの白い馬」

   ある女性が韓国ドラマ「春のワルツ」を見ていて、そのあとで、たまたま紺野美沙子の朗読「スーホの白い馬」を見つけた。これに「えぇっ!スホ!?」と驚いた、というブログを見つけた。

   「スーホの白い馬」というのは、40歳以下ぐらいの若い人は国語の教科書に掲載されているので誰でも知っているだろう。大塚勇三の再話、赤羽末吉の絵で昭和42年に福音館から出されて40年間親しまれている絵本だ。お話は、モンゴルの草原に育ったスーホは、ある日白い子馬を拾って帰る。スーホの世話で白い馬は美しくたくましく育った。殿様の主催した競馬から、白い馬は殿様にとりあげられることになるが、白い馬はスーホに会いたくて逃げて帰った。しかし、矢を射こまれて命を落とす。白馬の願いで、その身体から作ったのが、馬頭琴(モリン・ホール)であった。その音色がすばらしく、モンゴルの人々の心をやわらげたという、スーホと白い馬の愛の物語。ところが昔、言語学の田中克彦が「名前と人間」という本の中で、モンゴル人には「スーホ」という名前はいない、これは斧という意味の「スヘ」の間違いと指摘した。おそらく絵本の再話をする人が中国の漢語から「スホ」とカタカナ表記を適当に充てたのだろう。モンゴルの人からすると「スーホ」は聞きなれない名前らしい。ところでイ・ビョンホンの新作映画「夏物語」で主演しているヒロインの芸名は「スエ」である。「スホ」「スエ」「スヘ」などは韓国ではよく見られる名前なのだろう。

    問題の「春のワルツ」というドラマは、韓国の美しい島で母親と二人きりで暮らしている少女ウニョンの元にスホ(ウン・ウォンジュ)がやって来て仲良しになる。成長したウニョン(ハン・ヒョジュ)のもとにスホに似たチェハ(ソ・ドヨン)が現れる。スホとチェハは同一人物である。ウニョンとチェハの二人の愛の行方や如何に。

   さて冒頭で紹介した女性の疑問に対して、正確に答えるだけの言語学的、東洋史的知識をケペルは持たない。ただ同じ蒙古斑を持つモンゴルと韓国が、似たような名を持つことは偶然とは思えない。モンゴル語にくわしい田中克彦のいうように「スヘ」と発音することがより近いので問題はそう簡単ではない。韓国人名にはすべて漢字が充てられるので、漢語の音が変化したことが考えられないだろうか。人名ひとつとってみてもいろいろな興味と疑問がわいてくる。

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