河上肇と漢詩
「貧乏物語」で知られるマルクス主義経済学者の河上肇(1879-1946)は、4年半に及ぶ獄中生活で漢詩と親しむ。
無題 昭和8年2月18日
年少 夙に松陰を欽慕し
後 馬克斯礼忍を学ぶ
読書万巻 竟に何事ぞ
老来 徒に獄裏の人と為る
*
注釈○松陰ー吉田松陰。河上は若いころから同郷の先輩である松陰を敬慕していた○馬克斯礼忍ーマルクス・レーニン。現代中国語では、馬克思・烈寧と書く。○竟ーついに、と読む。○老来ー年老いてから。
河上肇は、この年の1月12日、東京中野の隠れ家で検挙され、1月27日、豊多摩刑務所に収容された。容疑は、治安維持法違反。獄中生活は昭和8年1月から昭和12年6月まで4年半に及ぶ。その間、学者として非転向を貫いた。この詩は、翌2月の18日、獄中から夫人にあてた書簡に見える。(参考:一海知義「河上肇詩注」岩波書店)
▼この記事は、ゼファーさんからのご指摘により一部訂正しました。(平成19年6月15日)
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河上肇の漢詩は、獄中で成ったものは、挙げられた一首のみで、あとは、京都などでの「閑居生活」のなかで作られたものです。
投稿: ゼファー生 | 2007年6月13日 (水) 19時03分