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2006年12月24日 (日)

お雪と磯部玉枝

   燃えよ剣、第10話「堀川の夜雨」では、お雪という女性が登場する。武家の女で、京都で江戸の女性に出会った土方歳三は惚れる。きりっとした武家の作法を身につけていて、しかも火のような情熱をうちに秘めている。司馬遼太郎の原作には「まつ毛の美しい女」とある。演ずる磯辺玉枝は、まさに原作のお雪のイメージどおりだった。歳三を見つめる表情だけで、その想いを表現している。原作のお雪は、箱館まで歳三を慕って追ってくる。原作の描写を抜粋する。

   < おれの名は、悪名として残る。やりすぎた者の名は、すべて悪名として人々のなかに生きるものだ > 歳三は、もはや自分を、なま身の自分ではなく劇中の人物として観察する余裕がうまれはじめている。いや余裕というものではなく、いま過去を観察している歳三は、歳三のなかからあらために誕生した別の人物かもしれなかった。「お雪」と、つよく抱き締めた。お雪の体を責めている。お雪は懸命にそれを受けつけようとしていた。歳三は、もはやいま生きているという実感を、お雪の体の中にもとめる以外に手がなくなっていた。いや、もう一つある。戦うということである。それ以外に、歳三の現世はすべて消滅してしまった。お雪も、歳三のそういう生命のうめきというか、最後に噴きだそうとする何かを体中で感じとっているのか、悲嘆などはまったく乾ききったような心で歳三を受けた。

    女優の磯部玉枝については、昭和20年11月23日生まれで日活にいたことしか知らない。山本陽子にしても磯部玉枝にしても、吉永小百合の全盛時代の日活では、いい役がつかなかったのだろうか。日活は昭和40年代になると、アクションから任侠路線に変更したが失敗した。磯部玉枝も任侠映画とテレビ時代劇が芸能活動の中心であった。彼女の女優としての存在たらしめたのは、土方歳三の愛人、お雪の情感溢れる演技であろう。

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