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2006年12月23日 (土)

増田貴光と映画雑誌「スクリーン」

   洋画ファンのための雑誌「スクリーン」が創刊60周年を迎えて、2007年2月号に「歴代人気スター100人」の附録がとても懐かしくていい。昭和23年の表紙は、表がタイロン・パワー、裏が原節子で、定価は4円80銭。昔は「映画の友」のほうが人気があったが、ハリウッド映画が次第に低下するなかで、ヌーベルバーグのヨーロッパ映画中心のスクリーンに人気がでた。もっとも男子のお目当ては水着の外国女優の写真だったが。

   スクリーンの長い歴史から見れば、ほんのひとときの閃光のようなものなのだが、なぜかスクリーンというと映画評論家の増田貴光を思い出す。記事としては「ヤング・シネ・ジャーナル」「貴光のおしやべりルーム」など短いコラムなどで荻昌弘のような専門の映画評論は皆無だが、昭和45年から49年にかけてのテレビでの活躍ぶりが印象にあるからであろう。「また、貴方とお会いしましょう」とカッコよく視聴者に指を差し、若いわりに古い映画もよく知っていたことに驚かされた。「ベルト・クイズ・Q&Q」の司会、ラジオのパーソナリティー、「夜の虫」「こころの傷」とレコードまで出している。当時、高校の文化祭の人気タレント投票ではダントツの一位の人気者だった。例の川口松太郎宅への「一件落着証詐欺事件」や週刊誌などのホモ騒動などが芸能界の引退原因であろうが、罪はすでにつぐなわれ、ホモに対する社会観念も当時と現代では変化しており、あの70年代初頭の映画評論家・タレント増田貴光の全仕事を見直してもいいのではないだろうか。

   いま「スクリーン」の古雑誌を読み直すと、増田貴光の書いた一文には、映画の虚像の世界と現実との世界との混同、妄想がよくみられる。例えば、「スクリーン」昭和45年11月号には次のような記事がある。

   試写をみてから、既にみつきもたつというのに、今だに僕には「サテリコン」にとり憑かれていて、昨夜も巨大な鉄の船に乗り、斜めに引きあげられてくる鉛色の鯨に押しつぶされた夢をみて、怖ろしい勢いで眠りから醒めました。そんなふうに僕は完全に「サテリコン」の深みに飲み込まれていて、浮きあがる事が出来るのは、他の映画を観ている時だけです。信じて頂けないかも知れませんが、食事中でも「サテリコン」を想い浮かべると、激しい嘔吐にみまわれてそれ以上食が進まなくなったりするのです。おまけに、「サテリコン」を観てからというもの、自分自身、すっかりスランプに落ち込んでしまいました。あの魅惑的で、毒々しい画面のひとつひとつに、毎日どっぷりと浸っていたい気持でいっぱいなのに、朝、目が醒めるとテレビ局からの車が待っていて、毎日の生放送の司会に出かけてゆき、カメラの前に立つと、ニッコリ笑って「今日はお元気ですか」なんて云わなければならない。常々、人間が生きていく為のそういう矛盾は感じてはいるものの、それが一層ひどくなってスランプになったんです。しかし、何という事でしょう。そのスランプが僕には楽しくて楽しくて仕方がないのです。吐き気だって、「ゲッー」とやっている時は、大変良い気持ちなのです。酒を飲みすぎた時の吐き気等は我慢がならない程不快なのに、僕はこの違いに自分でも吃驚しています。TBSに高樋洋子さんという凄いほどの才能を持っている女性ディレクターがいて、彼女も「サテリコン」を観て、そんな状態になったと聞いて、こんな仲間がもっといたらなあ、と再び「サテリコン」の事を考え始めるのです。僕の「サテリコン」病は、まだまだ続きそうです。もしかしたら、一生、続くかも……。

   映画中毒症という病名は存在しないが、感受性豊かな若者が映画を観て、また多忙な仕事の中で人間性を喪失することは、十分に考えられると思う。そして精神医学の未発達であった1970年代という時代状況を考えると、増田貴光という時代の寵児に、社会はやさしくあってもいいような気がする。

 おなじく「スクリーン」昭和45年9月号には、彼の1週間の仕事のスケジュールがのっている。

 月曜日から金曜日までは、「ベルト・クイズ・Q&Q」の司会。生放送で12時から。火曜日の6時は「土曜映画劇場」の解説の収録。土曜日はNHKで青少年番組の司会。その真夜中に「オール・ナイト・フジ」という3時間あまりの超ワイドテレビ番組の映画コーナーで、新しい映画の紹介をしている。その他、毎週ではないけれど、ファッション・ショウの司会とか、いろいろなテレビやラジオ番組のゲスト出演がある。そして、「スクリーン」を始めとして三冊の月刊誌にレギュラーで原稿を書いている。まだある。検察庁主催の「風俗取締り委員会」という15人の委員で構成されている会の、僕もなぜか委員のひとりに選ばれて、ピンク映画やモーテルなどを見学して、意見や感想等を述べる、ということ。

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コメント

昔、増田貴光 が捕まったときに接した者です。
映画評論家は多いですよね・・○○が 。

たしか奥さんが週刊誌に、「結婚して処女のまま離婚した~!」との記事で、当時はセンセーショナルでした。

本人にそのことを問うたところ、「私どもは世間様一般の夫婦生活を営んでおりました。週刊誌に書かれていることはありません」との答えだったけど、
数週間で慣れてきて、もう○○丸出しで、私が冗談でち○こを出そうとすると、艶っぽい?目つきでしなをつくりながら擦り寄ってきました(笑)。

懐かしい名前をみつけたもので、くだらないカキコをしてしまいました。 元気でいるのかな?
人間的には好きでしたよ おもしろくて。

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