福沢諭吉「心訓七則」
世に福沢諭吉の「心訓七則」というのがある。福沢の数多い箴言のなかでも、今日でも世人に最も良く知られた言葉である。額装された「心訓」が100円ショップでも購入できる。けれども残念ながらこの心訓は福沢の言葉ではない。どこかの知恵者が勝手に、それもどうやら戦後になってつくり上げた、偽作である。「福沢諭吉全集」第20巻の附録で、富田正文が「福沢心訓七則は偽作なり」と断定している。近年、清水義範の「福沢諭吉は謎だらけ」でいろいろこれに関して推理しているが面白い。とくに福沢諭吉の「脱亜論」は時事新報社の石河幹明が書いた論説で1933年の「福沢諭吉全集」に収められたという平山洋の「福沢諭吉の真実」の新説を採用している。そして「脱亜論」は戦前それほど知られておらず、1951年の遠山茂樹、1961年の竹内好らによって、福沢諭吉の「脱亜論」はよく知られるようになったのだという。
訂正とお詫び(12月18日)論説「脱亜論」の初出は、明治18年3月16日付の時事新報の無署名の社説であるが、昭和8年7月刊行の慶応義塾編「続福澤全集第2巻」(岩波書店)に福沢諭吉の著作物として収録されたものである。「福沢諭吉の真実」の著者の平山洋氏から、「脱亜論」は福澤諭吉の真筆であると考えておられる旨のご指摘があったので、ここに訂正とお詫びを申し上げる。
心訓
一、世の中で一番楽しく立派な事は 一生涯を貫く仕事を持つという事です。
一、世の中で一番みじめな事は、人間として教養のない事です。
一、世の中で一番さびしい事は、する仕事のない事です。
一、世の中で一番みにくい事は、他人の生活をうらやむ事です。
一、世の中で一番尊い事は、人の為に奉仕して決して恩にきせない事です。
一、世の中で一番美しい事は、全ての物に愛情を持つ事です。
一、世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です。
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拙著をお取り上げくださり、ありがとうございます。
一点、訂正を。私自身は、「脱亜論」は福沢真筆で、何ら恥じる必要のない論説と考えております(拙著205頁)。
それから、清水義範氏とは手紙のやりとりをしていますので、サイト「平山洋氏の仕事」をご覧いただければ幸いです。
投稿: 平山 洋 | 2006年12月18日 (月) 09時31分
通りすがりの者です m(_ _)m。
偽書と言えば、安川先生、ついにここまで…… (つ_;)。
http://blog.so-net.ne.jp/JesusLovesYou/2006-09-02
参考:
http://www.asahi-net.or.jp/~ku3n-kym/tukuru/tugaru/tugaru.html
投稿: オラ | 2006年12月24日 (日) 00時16分