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2006年11月18日 (土)

共謀罪と治安維持法

   図書館関係者はじめ多くの団体は反対意見を表明してきたが、ついに教育基本法改正案が衆議院を通過した。例えば、図書館問題研究会は「図書館設置が教育の目的と切り離され、権力による支配や介入を許し、愛国心などを教育の目標として生涯にわたって達成するための機関と位置づけられる。それは現行図書館法そのものの改編・改悪へとつながり、あらゆる市民に知的権利を保障するために資料・情報を提供し続ける民主主義の砦としての図書館にとって、重大な危機といわざるを得ない」(教育基本法改悪法案の廃棄を求める決議)と述べている。

    だが図書館の危機はこれにとどまらない。いま政府は共謀罪の法案の成立を進めている。共謀罪の特徴は、犯罪を実行しなくても、事前に話し合い、合意しただけで罪になることである。内容的には4年以上の懲役・禁固にあたる罪が、「団体の活動として犯罪実行のための組織により行われる場合」の共謀を罰する。対象犯罪が、「死刑、無期、10年を超える懲役・禁固に当たる刑」の場合は5年以下の懲役・禁固。それ以外の場合は2年以下の懲役・禁固。政府は国際的な組織犯罪、テロ行為、地下鉄サリン事件などの事例を想定して、処罰の早期化によって治安強化を図るねらいがある。ところが法の濫用によっては、集団の抗議行動や製品の不買運動などが業務妨害とされ、その協議をすること自体が共謀罪に問われることもありえる。自由にものがいえない世の中になり、民主主義の根幹である表現の自由や市民の言論の自由が脅かされかねないのである。すでに多くの団体が反対声明をだしているところである。マスコミ・ジャーナリズム関係では、日本ペンクラブ、日本ジャーナリスト会議、日本マスコミ文化情報労組会議、出版流通対策協議会、日本新聞労働組合連合などなど。多くの識者は、共謀罪は戦前の治安維持法に勝るとも劣らない悪法と述べている。ところで日本図書館協会はこの共謀罪について明確な見解を発表しているのであろうか。「知る自由」「読む自由」と最も密接な関係にある団体が沈黙することは何か理由があるのだろうか。HPを見たが本年度の見解・意見・要望は「中古電気用品に対する電気用品安全法の運用について」ほか二件のみで共謀罪に関しては見当たらなかった。ちなみに図問研ではすでに「改正手続法、共謀罪の廃案を求める決議」を平成18年7月11日第53回全国大会で決議しいてる。

   日本図書館協会はついに教育基本法改正に対しても反対声明をだすことはなかった。「図書館雑誌」最新号(11月号)ではNEWSのトップで「教育基本法改正について意見表明相次ぐ」の記事があるが、よく読むとまるで他人事のような内容なのだ。学校図書館を考える全国連絡会、図書館問題研究会、学校図書館問題研究会の反対理由を紹介しているが、不思議なことに協会がどういう意見なのか不明なのだ。このような最近の日本図書館協会の重要問題への対応の立ち遅れや貸出重視に対する見直し論議の背景には一部の政府、文部省寄りの図書館学者が協会を支配し、戦後民主主義を軌道修正する動きがみられ、協会の保守化傾向が顕著になってきていることが理由にある。今後、これからの図書館像が愛国心教育と思想統制によって、戦前の治安維持法下のような思想善導機関となることが大いに懸念されるところである。

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