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2006年11月24日 (金)

図書館の危機を煽る学者たち

   今、公共図書館の現場ではさまざまな現象が起こっている。委託、派遣、PFI、指定管理者制度などなど。

   そして某日、わが職場では「館長面談」というのがあった。職員一人一人と館員が30分くらいフリーな内容で話をするのである。もちろん人事異動のための本人の希望をきくことがメインであるが、いろいろな雑談もした。館長は改革派であり(東京出張で糸賀や薬袋の研修を受けている)、終わりに「図書館はどう変わるのか」(図書館の学校2006.No.69)のコピーを渡された。それは2005年11月10日、11日に行われた図書館セミナー「デジタルで変わる図書館」と「公共図書館の運営システムが変わる」をテーマの公開討論記録である。出席者は糸賀雅児、小川俊彦、高山正也、冨江伸治。

   糸賀はすでにいろいろな講演や論文でいっているが、開口一番「日本の公立図書館は、危機的状況をとっくに通り越してもはや手遅れです」と述べている。以下「これからは公務員の方々は図書館で働きたくても働けなくなるでしょう」高山正也は「あなたは公務員をとりますか、図書館員をとりますか、と問う時代になってきている」といい、専門職のグレード制に熱心である。これらの学者たちは政府と情報系企業とアメリカ制度(アメリカと日本とは国情が異なり合わないことのほうが多い)を引き合いに出し、戦後制度の見直し論(実は戦前回帰のことである)を主張しているのでいわば改革派といえばわかりやすいかも知れないが、実は保守系なので「うわべだけの改革派」なのだ。

   現代は恐怖、不安を煽られる時代であるが、多くの場合、それはつくられた「現実」であったり、虚像としての民営化モデルだったりする。つまり、変化は意識の面だけで、現実にはそれほど図書館が変わっていなかったり、変わっていても一部の田舎の図書館だけだったりする。都市部の中核的な図書館はいまも「市民の図書館」を基本に運営しているところが多い。館長にそれを言うと即座に「君は甘い!」と言われた。そうかも知れない。しかし人は恐怖の中よりも希望の中でもっと豊かに成長できるものである。学者は頭がいい。社会学の清水幾太郎という人は戦後の思想界をリードしてきた学者だが、転向するのも早かった。よく彼の経歴を調べたらなんと戦前の専門は「流言蜚語」のプロだった。国民を煽るのはうまいはずだ。当世流行の図書館学者も頭はいいしアジの手口も清水以上だ。危機、恐怖、不安を煽ることにかけてはプロであるが、彼らの著作物や言説が本当の意味での学としての図書館学といえる内容なのであろうか疑問に思っている。曲学阿世という言葉は封印して、30年後に再読して判定するという老後の楽しみができたわけだ。

    ケペルは館長に次の論文を読んでほしいと勧めた。「つくられた現実、虚像としての民営化」田井郁久雄、「みんなの図書館2006年10月号」。本稿は「談論風発、図書館批評誌」創刊号 2006.4.6よりの転載である。とくに「山中湖情報想像館は先進的なモデルか」はいまマスコミなどで話題の図書館であるが、はたして本当に「これからの図書館像」の学者たちがおすすめするような図書館なのだろうか。その結末をみるのがこれからの楽しみである。

   全国の図書館で働く司書資格のない方々へ。ケペルの考えはこうである。「大丈夫。そんなに気にしなくていいよ。学者は政府の構造改革、民営化推進のため恐怖、不安を煽っているのだ。虚妄の論理にだまされないで」

      詩

      生 長 (武者小路実篤)

どうしてもとどかなかった枝に

ふと手を上げて見たら

楽にとどくようになった。

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