貧乏な大帝王
カール5世(1500-58)は、カスティリャ王国のイサベラ女王(1451-1504)の孫で、皇帝となったのは18歳のときだった。ドイツ皇帝、ナポリ王、スペイン王、オランダ王を兼ね、カリブ海、メキシコその他征服諸地方の主権者で威勢天地に輝き、「スペイン一度動かば、天下これによって振動す」という言葉を生んだほどである。
しかし、この大帝王も銀行家フッガーの前には頭があがらなかった。大銀行家というのは、各国の王に融資して大もうけをしたものである。カール5世も、神聖ローマ帝国の皇帝位をフランス王フランソア1世と競争し、7人の選挙候の買収のために85万フロリンの借金をした。当選確定後、選挙候ひとりにつき10万フロリンを支払い、諸侯の侍臣・貴族・判事などに贈るために、ほぼ同額の追加借り入れをし、戴冠式のためさらに12万フロリン以上を借り入れた。ペルーの征服によってもたらされた莫大な金銀も、借金払いの征服によってもたらされた莫大な金銀も、借金払いにあてられ、生涯貧乏したのである。(参考:井沢実「大航海と新大陸」小学館)
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