青年将校の危機意識
三月事件、十月事件(錦旗革命事件)の首謀者である橋本欣五郎の桜会の趣意書には、「現今の社会を観るに、高級為政者の冒涜行為、政党の腐敗、大衆に無理解なる資本家、華族、国家の将来を思はず国民思想の退廃を誘導する言論機関、農村の荒廃、失業、不景気、各種思想団体の進出、糜爛文化の躍進的台頭、学生の愛国心の欠如、官公史の自己保有主義、等邦家の為、まさに寒心に堪へざる事象堆積たり」とあり、「此時に当り辛ふじて少なくとも一定の主義と熱とをもって奮闘しつつあるを独り左傾団体にのみ見出さざるぺからざるの奇現象は果たして吾人に何を教示するか」とある。三六危機を叫び、昭和維新の魁となったエリート青年将校の思想の特色はこうして、既成体制に安住する旧支配層とはきわめて異質な危機の時代意識であり、「左傾団体」に拮抗する主義と熱にあったと言える。
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