出羽三山
出羽三山というのは、羽黒山、月山、湯殿山の三つの山をいう。この三山は古くから修験道の地としてその名を知られている。芭蕉と曽良は羽黒山に登って、図司左吉の案内でここの別当代の会覚阿闍梨(えがくあじゃり)という人にお目にかかった。二人は阿闍梨に、南谷の別院で、心のこもった歓待をうけた。
有難や雪をかをらす南谷
(まだ残雪のある南谷に、薫風が南から吹き渡って、雪の香をかおらせる。有難いことである。)
涼しさやほの三日月の羽黒山
(仄かな三日月に照らし出された羽黒山の姿を、南谷の坊から見ていると、如何にも涼しい感じである。)
雲の峰幾つ崩れて月の山
(月山が月の光にくまなく照らされて、眼前に雄偉な山容を現している。昼間立っていたあの雲の峰が、いくつ崩れて、現われ出た月のお山であるか。)
語られぬ湯殿にぬらす袂かな
(湯殿山の神秘は人に語ることを禁じられている。その語られぬ感動を胸に籠めて、ひそかに感涙に袂を濡らすことであるよ。)
湯殿山銭ふむ道の泪かな
(湯殿山に詣でる人の賽銭が道々に散らばり、それを踏みながらお宮に詣で、感涙にむせぶことよ。)
なぜ湯殿山の見聞を他言することを禁じたのか。おそらく、この山が生殖器崇拝の土俗に基づいたためではないかと思う。
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