嵐が丘(エミリー・ブロンテ)
「ワザリング・ハイツ(嵐が丘)」と呼ばれる名家アーンショオ家の当主は早く夫人を失い、12歳のヒンドリイと9歳のキャサリンの二人の子どもの成長を楽しみにしていた。ある日、 アーンショオ氏は町で浮浪児を拾ってきて、ヒースクリフと名づけて養子にした。
ヒンドリイは兄となったヒースクリフを憎悪し、ことごとに冷たい態度を示したが、妹のキャサリンだけは暖かい好意を見せるのだった。幼いふたりはヒースの生い茂る野を歩いたり岩山で遊んだり、楽しい日々を過ごす。しかし、養父の死によってこの楽しさも終わりを告げる。ヒースクリフは、息子のヒンドリイに虐待されて、下僕の身分に落とされ、熱愛していた妹娘のキャサリンにも、「ヒースクリフと結婚するのは、あたしの落ちぶれることだもの」と裏切られ、絶望して家出する。
そして三年後、南米で事業に成功した彼は「嵐が丘」に戻ってきた。そこから、彼の狂人じみた復讐が展開される。
キャサリンの嫁ぎ先であるリントン家には、イザベラという娘がいた。ヒースクリフはイザベラを誘惑して結婚する。その一方、多くの負債を背負ったヒンドリイの借財を買い取り、「嵐が丘」の新しい主人におさまった。偽りの結婚をしたヒースクリフだが、年を経ても今もなお愛する人はただひとり、キャサリンだった。そのキャサリンもいまや、病の床にある。キャサリンが死んだのち、ヒースクリフは自分とイザベラとの間に生まれたリントン・ヒースクリフとキャサリンの忘れ形見のキャシー・リントンを結婚させて、リントン家を乗っとろうとする。だがリントン・ヒースクリフはまもなく死に、また、アーンショオ家とリントン家を没落させる企てが失敗してみると、ヒースクリフは、しだいにその恨みと仕返しの根性が弱まってしまう。そして、キャサリンの思い出が苦しみとなって、ヒースクリフはついに自殺する。
ヒースクリフがキャサリンに対して狂気のように激しい愛情の火を燃やしながら、ついにこの世では愛を成就させることができず、二人ともども隣合った墓で長い眠りにつく。そして、愛と憎しみと暴力の丘は、もとの平和と静けさとをとりもどす。Wuthering Heights
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