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2006年7月17日 (月)

つる女房

   川のほとりに金蔵という若者がいて、山から薪を切ってきては町で売って暮らしていた。ある日、町からの帰り道に山を通ると、子どもたちが鶴の足に縄をかけて遊んでいたので、薪を売った金でその鶴を買いとって逃がしてやった。

    その晩、金がないから葉っぱ汁でも食べて寝ようと思っていると、戸を叩くものがあり、道に迷ったので一晩泊めてくれと言う。それは美しい娘で、金蔵は驚きながらも招きいれた。翌朝、娘は両手をついて、「嫁にしてくれろ」と言うので嫁にすると、「それでは、ひとつ布を織るから、出来上がるまでのぞかないでおくやい。七日めの晩には、きっとお気に入りの布を作ってあげます」と言って部屋に閉じこもって機を織り始めた。

    七日めの晩に嫁は一反の布を金蔵の前に出して、「これを売って、欲しいものを買ってください。この布は五両には売れます」と言うので、金蔵がその布を町へもっていくと、旦那がびっくりして十両で買ってくれて、つぎは十五両で買ってくれると言った。金蔵は帰宅して嫁にむりやり織らせた。嫁は「ほんじゃ、出来上がるまではけっして見ないでおくやい」と言って織り始めた。

    金蔵は、そんなにめずらしい布をなんじょして織るもんだかと思うと、気が気でなくなって、こっそり節穴からのぞいてびっくりした。丸っ裸の鶴が自分の体から一本、また一本、毛を抜いて織っているんだど。「あっ」と声を立ててしまったもんだそうな。その晩おそく機の音が止んで、嫁が布を持って部屋から出てきたとおもったら、金蔵の前にぺたりと座って、「長い間お世話になり申した。じつは先日助けられた鶴で、恩返しに嫁になってきたが、正体を見られては、帰らんなね」というが早いか、鶴の姿になって、月の光の中を飛び立っていった。鶴が二回まわったところが鶴巻田といい、糸をとった川を織機川という。金蔵が出家して寺を建てたのが珍蔵寺で、その寺には鶴の織った曼荼羅が残っているという。(山形県置賜地方)

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