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2006年7月15日 (土)

狭き門

   早く父を失ったジェロームは、少年時代から夏休みになると叔父ビュコランのもとで過ごし、従妹のアリサにひそかに心を寄せていた。ある日、ビュコランの家に行くと、叔母リュシルが若い中尉とふざけていた。それを悲しんでいるアリサを見た瞬間、彼は自分の一生を決定したのであった。

   教会で「力を尽くして狭き門より入れ、滅びにいたる門は大きく、その路は広く、之より入る者はおほし、生命にいたる門は狭く、その路は細く、之を見出す者すくなし」という聖書の言葉を引用した牧師の説教を聞くや、彼はアリサにふさわしい人間になることが己の使命だと考える。

   アリサは、ただ沈黙を守っているだけで、ジェロームを避けるようになる。ジェロームが結婚してくれと頼むと、「二人は幸福のために生まれてきたのです」と言って、ジェロームを絶望させる。

   三年別れたあとで、ジェロームはアリサに会うが、彼女はすっかり変わっている。彼は彼女に愛情をこめて話をするが、「さようなら、今こそはじまるのです。もっともよいものが」と言って、ジェロームを木戸の外に押しやってしまう。それから1ヶ月してアリサは死ぬ。

   彼女の日記が残され、そのなかで彼女の痛ましい秘密が教えられる。アリサはジェロームを愛していたのだが、またいっぽうでは完全なキリスト教徒になろうとしており、そうした完全さというものは、愛に抵抗することによって、はじめてえられるものだと確信していたのである。そのうえアリサが求めていたのは、彼女自身の幸福よりも、むしろジェロームの幸福だった。というのは、ジェロームを自分から引き離すことによって、かれがただ一人で、聖書に語られている、あの二人並んでは入れない「狭き門」のほうへ進んで行くのを見たいと望んだのである。(アンドレ・ジイド、1909年)

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