歌枕の宮城野
宮城野とは、仙台城下の東方にあった原野名で、陸奥国分寺跡に建立されたとする国分寺薬師堂の北側に開けていた。近世には、すでに昔は人が住んだが今は野良山で、草堂一宇しかみえないという。「観蹟聞老志」によれば、平原は広く草は茂り、古来有名な錦萩をはじめ、女郎花・吾亦紅・萩・藤袴・刈萱・桔梗ほか名もなき野草など無数の秋花が100種を数え、雲雀・鶉が多い。
芭蕉が、宮城野に逗留したのは、菖蒲の節供の日で、家々の軒には菖蒲がさしてある。いただいたわらじの緒に菖蒲を結んで、健脚を祈ることにしょうと、つぎの句を詠んだ。
あやめ草足に結ばん草鞋の緒
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近世の明和8年に宮城野を訪れた儒者の細井平洲は「栗の畑にくさぐさの葉もまじおひて、いづこに萩の咲いたるらん」と記している。明治・大正・昭和の時代に入り、旧陸軍の錬兵場と化したが、現在は宮城野原公園総合運動場を中心に宮城野原貨物駅・国立仙台病院ほか工場団地・住宅地となり、昔日の面影はない。
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