牧畜と家畜
牧畜とは群れをつくる有蹄類の飼養をさすと言われる。そこで対象となる家畜について述べる。
牧畜の対象になる有蹄類家畜は、動物学的にはそのヒヅメの数から奇蹄目と偶蹄目の二つにわかれている。奇蹄目のウマ科に属す家畜として、ウマとロバがある。この両者はたいへんちかく、交配によってラバが生産されていることはよく知られている。やや特殊になるが、古代メソポタミアで戦車をひいていたという、ロバ・ウマ両方に似たオナーゲルもこれらにくわえられるだろう。
偶蹄目のウシ科には、ウシ、スイギュウ、ヤクがある。ヤクはヒマラヤからチベット、さらにモンゴルにかけてみられ、ウシにくらべるとかなり毛が長い家畜である。これらには、ウシと同じ種に属するが形態のかなりちがうインドウシ(コヴウシ)や、ウシとの関係がなおはっきりしない、アッサムから東南アジアに分布するガヤル(ミタン)とバンテンもふくまれることになる。ガヤルもバンテンもウシにちかいことだけははっきりしており、いずれもウシと交配可能である。この点ではヤクの場合もおなじで、ウシとのあいだにできる雑種のメスには繁殖力がある。ウシ科のなかで小型のものとして、ヒツジ、ヤギがある。
ラクダ科にうつると、まず旧大陸には二種類のラクダがいる。ヒトコブラクダは乾燥と暑さに強く、良好な遊牧地であれば何週間も水なしですごせるほどで、西南アジアと北アフリカに分布する。もう一方のフタコブラクダは冷涼な気候に適し、おもに中央アジアに分布している。両者をみくらべると、毛の長さや体形はかなりちがうが、やはりおたがいにたいへんちかい関係にあり、交配によって雑種をつくることができる。他方新大陸(アンデス)のラクダ科に属す家畜として、リャーマ、アルパカがいる。これらも外見はかなりちがうが、同じ種と考えられる。
シカ科のトナカイは別の意味で私たちになじみが深く、忘れることのできない家畜である。トナカイは寒冷なツンドラや森林に適しており、ラクダのように他の家畜では利用できない環境を利用することを可能にしている。
有蹄類家畜としてはほかにイノシシ科のブタがいるが、これは群れ生活をせずにふつうは牧畜の対象とは考えられていない。それでもヨーロッパの村落ではブタの群れが放牧され、他の家畜と似たあつかいをうけることがあり、場合によってはこれまであげたものと同列に考えることができるように思われる。
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